〜五〜
前回は養成所に入る前の心構えとトレーニングについて紹介しましたが
今回は現場で私が感じている事を率直にお話しましょう。
ここ10年ぐらい仕事の現場で感じることですが
若い人たちの演技はどうしても底が浅いような気がしてならない。
大変な苦労をしてせっかくヒーロー、ヒロインを獲得したのに
次へのステップアップにならない。
つまり、使い捨てになってしまう人達がいます。
本来なら一本レギュラーをとったらそれを足がかりにして
一歩一歩階段を昇っていかなければならないはずなのにね。
声優になるために、声優の勉強をして、声優になっちゃった、
という人達も多い現在、映像に声をあてる、という事だけは
むしろ僕らよりうまい人もいます。
でも残念ながら心を演じていない、人間を演じきれていない。
つまり、「らしく」演じる類型芝居ってやつですね。
昔から「歌は語れ、セリフは歌え」というけれど
「歌い手がこんなにすごい芝居するのか」って驚かされる
ケースがたくさんあるじゃないですか。あれは歌詞を心で語って
曲にのせるという、役者の基本が身に付いているからだと思います。
役者の芝居を優先して、絵を直す。
今はデジタルで簡単に直せるようですが、昔は大変でしたからね。
もちろん、セリフの寸法は守るように努力はします。
しかし、セリフは「間」の芸術とも云われるように、
「間」と「リズム」はセリフの基本です。
そうなった場合は演出家が「イエス!芝居優先、絵を直します」
といった事だって可能だったんです。
今はアニメーションの絵の技術がどんどん良くなっているのだから
演じる側も心して演じなければなりません。
声優は俳優の仕事の一部であることを忘れないで下さい。
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