前回は養成所に入る前の心構えとトレーニングについて紹介しましたが

今回は現場で私が感じている事を率直にお話しましょう。

 ここ10年ぐらい仕事の現場で感じることですが

若い人たちの演技はどうしても底が浅いような気がしてならない。

大変な苦労をしてせっかくヒーロー、ヒロインを獲得したのに

次へのステップアップにならない。

つまり、使い捨てになってしまう人達がいます。

本来なら一本レギュラーをとったらそれを足がかりにして

一歩一歩階段を昇っていかなければならないはずなのにね。

声優になるために、声優の勉強をして、声優になっちゃった、

という人達も多い現在、映像に声をあてる、という事だけは

むしろ僕らよりうまい人もいます。
でも残念ながら心を演じていない、人間を演じきれていない。

つまり、「らしく」演じる類型芝居ってやつですね。

昔から「歌は語れ、セリフは歌え」というけれど

「歌い手がこんなにすごい芝居するのか」って驚かされる

ケースがたくさんあるじゃないですか。あれは歌詞を心で語って

曲にのせるという、役者の基本が身に付いているからだと思います。

 役者の芝居を優先して、絵を直す。

今はデジタルで簡単に直せるようですが、昔は大変でしたからね。

もちろん、セリフの寸法は守るように努力はします。

しかし、セリフは「間」の芸術とも云われるように、

「間」と「リズム」はセリフの基本です。

そうなった場合は演出家が「イエス!芝居優先、絵を直します」

といった事だって可能だったんです。

今はアニメーションの絵の技術がどんどん良くなっているのだから

演じる側も心して演じなければなりません。

声優は俳優の仕事の一部であることを忘れないで下さい。


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