〜参〜


特別講師として、ある養成所を訪れた事があります。

授業の一番最初に「柴田秀勝といいますが、私の事はご存知ですか?」と問いかけると、

数人の人は手を挙げたけれど知らないという人もいました。

何故「柴田秀勝は何者なんだ」と調べてこないのでしょうか? 何故「柴田が来たらあれも聞いてみよう、

これも聞いてみよう」と思わないのでしょうか?

専門書を読もうとしない人も、落語や講談に耳を傾けない人も同じです。

知るための、つかむための、心のハングリーさを持ってください。

何かを目指す人の目の輝きは、必ずや教えてくれる先生方の心を動かすはずです。

それからもう一つ、今日から「俺は役者だ」「私は俳優だ」とイメージを持って生活して下さい。

よく仲間と「役者の成功とは何だろう」という話をしますが、結論は「感性」なんですよ。

役者はイメージを売る商売ですから、想像力を豊かにして感性を磨がかなければなりません。

感性は、その人の努力によって、差こそあれ、育て、育むことが出来るものです。

たとえば田中さんだったら、「俳優・田中として」エレベーターのボタンを押す。飯を食う。

俳優であるという、人に見られる事の意識を常に持ち続ける事なのです。

こうした日常のアンテナを張ることで、日常生活の中で体験した事や小説を読んで感じたことを

人間の持つ五感にしっかりと記憶させることなのです。

これを「役者の引き出し」といいます。

テレビにしても、ラジオにしても、そして映画でも

俳優を志す者にとっては、その全てが勉強のためのものと考えてください。

将来、あなたが「好み」で集めた「引き出し」から引き出して演じるとき、

それは、あなたしか持っていない「個性」に生まれ変わっているでしょう。


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